ウクライナ“鉄の将軍”の無人機反撃戦略

執筆者:古本朗2023年1月16日
“鉄の将軍”ザルジニー・ウクライナ国軍総司令官 (C)AFP=時事

 厳冬のウクライナ各地に向け、ミサイルや自爆型無人機の反復集中攻撃で、電力や暖房の供給網など都市インフラ破壊を狙うロシア軍。氷点下の寒さと都市機能マヒで市民生活を窮乏させ、戦意喪失へ追い込もうという残忍な戦略に対し、目下、ウクライナ軍は攻撃の起点であるロシア国内の軍事基地などへの欧米供与兵器による反撃を、ウラジーミル・プーチン政権を過度に刺激したくない欧米から封印された格好だ。

 ロシア軍による一方的なインフラ破壊に苦悶しながらも、「鉄の将軍」の異名をとるウクライナの国民的英雄、ワレリー・ザルジニー国軍総司令官(陸軍大将)は、したたかで巧妙な反撃戦略を編み出した模様だ。長距離を飛ぶ自爆型無人機の国産態勢を緊急整備し、ロシア領深くの軍施設などを“戦果公表”を避けながら報復攻撃することで、プーチン政権とロシア世論を疑心暗鬼とともに動揺させ、ウクライナ領へのインフラ攻撃を躊躇させようとの狙いが垣間見えてくる。

NATOスタイルの将軍

 ザルジニー大将は1973年生まれの49歳。1997年にウクライナ軍のオデーサ陸軍士官学校を卒業後、国立国防アカデミー、国防大学で学んだ俊才で、北部作戦管区司令官などを歴任し、2021年7月にウォロディミル・ゼレンスキー大統領から国軍総司令官に任命された。旧ソ連崩壊(1991年)後に軍務に就いた新生ウクライナ世代の将軍である。作戦遂行の細部まで上層部の命令に縛られる、官僚主義的で硬直化した旧ソ連軍スタイルを排し、現場指揮官に柔軟な裁量権を与える北大西洋条約機構(NATO)スタイルを重視する。

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