ウクライナ“鉄の将軍”の無人機反撃戦略

執筆者:古本朗 2023年1月16日
エリア: 北米 ヨーロッパ
“鉄の将軍”ザルジニー・ウクライナ国軍総司令官 (C)AFP=時事
ウクライナによるロシアへの無人機“越境”攻撃は、核使用の誘発や欧米支援の退潮というリスクを負いつつも、クレムリンに衝撃を与えた点では効果的だった。その背景には、“鉄の将軍”と呼ばれるザルジニー総司令官が構想する際どい新戦略があると見られる。

 厳冬のウクライナ各地に向け、ミサイルや自爆型無人機の反復集中攻撃で、電力や暖房の供給網など都市インフラ破壊を狙うロシア軍。氷点下の寒さと都市機能マヒで市民生活を窮乏させ、戦意喪失へ追い込もうという残忍な戦略に対し、目下、ウクライナ軍は攻撃の起点であるロシア国内の軍事基地などへの欧米供与兵器による反撃を、ウラジーミル・プーチン政権を過度に刺激したくない欧米から封印された格好だ。

 ロシア軍による一方的なインフラ破壊に苦悶しながらも、「鉄の将軍」の異名をとるウクライナの国民的英雄、ワレリー・ザルジニー国軍総司令官(陸軍大将)は、したたかで巧妙な反撃戦略を編み出した模様だ。長距離を飛ぶ自爆型無人機の国産態勢を緊急整備し、ロシア領深くの軍施設などを“戦果公表”を避けながら報復攻撃することで、プーチン政権とロシア世論を疑心暗鬼とともに動揺させ、ウクライナ領へのインフラ攻撃を躊躇させようとの狙いが垣間見えてくる。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 軍事・防衛 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
古本朗(こもとあきら) こもと あきら ジャーナリスト。『読売新聞』ニューヨーク特派員、モスクワ支局長、国際部長、取締役等を歴任。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top