春節(旧正月)を控え帰省する人々で混み合う中国の北京駅(C)時事

 

「もう陽性になった?」。中国が突然「ゼロコロナ政策」をやめたことで新型コロナの感染者が急増した北京や上海で交わされる冗談まじりのあいさつだ。

 昨年12月初旬までは、会社のビルや飲食店に入るのにも地下鉄に乗るのにも「健康宝」(健康コード)というスマートフォンアプリでQRコードをスキャンし、48時間以内のPCR検査の陰性証明を示すことが求められ、不便きわまりない生活が続いてきた。それらが一切、必要なくなったことで、めまいがするほどの解放感と同時に、コロナ感染の恐怖が襲ってきた。コロナ関連の死者も増えたのか、火葬場に車両が行列をなす有り様だ。

 だが当局はもはや市民生活の混乱から目を背け、現場を放棄してしまったかにも見える。実際に、筆者はある行政機構の「逃走」を目の当たりにした。ただ、そこは中国である。事態は刻一刻と変化しており、北京市民は早くも新しい生活パターンに慣れつつある(だから冒頭のような冗談も飛び交う)。

 筆者は特派員としての任期が終わり、年明けに帰国したが、日本政府の水際対策強化を受け、中国から日本への渡航者は搭乗72時間以内のPCR検査の陰性証明書の提出が義務づけられた。筆者も慌てて検査を受けたが、結果は「陽性」。12月に一度「陽性」の判定を受けたのになぜか。信じられない思いで翌日にもう一度受けたところ「陰性」だった。中国の混乱ぶりはこんなところにも現れている。

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