戦車といえど、ハードウエアそれ自体だけで及ぼすことのできる影響力は限られている[レオパルト2=2022年10月17日、ドイツ北部オステンホルツ](C)AFP=時事

   ほぼ1年を迎えたロシア・ウクライナ戦争だが、2023年1月25日に大きな転換の兆しがあった。戦争開始以来、欧米はさまざまな武器をウクライナに供与してきたが、欧米製の戦車の供与は見送ってきた。しかし、年頭のイギリスによるチャレンジャー2供与表明に続き、この日、ドイツのレオパルト2、アメリカのエイブラムスの供与が表明されたのである。これは果たして戦争全体の「ゲームチェンジャー」となり得るだろうか。

「戦車の墓場」となりつつあるウクライナ

   あらゆる戦争はユニークな側面を持つ。2022年2月24日に始まったロシア・ウクライナ戦争の特徴は、第2次世界大戦の独ソ戦のように、戦車や榴弾砲、多連装ロケットランチャーを中心とする重火力戦闘が行われていることである。公開されている画像情報を元に両軍の損害を推計しているOryxというウェブサイトがあるが、それによれば、2023年1月30日現在、ロシア軍は既に1661両、ウクライナ軍は453両の戦車を失っているとされる1。これは、開戦前にロシアが現役戦力として保有していた戦車の56.7%、ウクライナが現役戦力として保有していた戦車の52.8%に相当する数字であり2、ウクライナの大地はいまや両軍の戦車の「墓場」と化している。

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