キーウを電撃訪問したバイデン大統領との会談に臨むゼレンスキー大統領(C)AFP=時事
 

 ウクライナが開戦時点で保有していた戦車は現役約1000輌、予備保管が新旧合わせておよそ1000輌(いずれもソ連時代に生産されたT-64、T-72等)とされているが、このうち少なくとも400輌以上を既に喪失している。また、主力であったT-64は、生産施設のあったハルキウがロシア軍の攻撃で大きな打撃を受け、予備部品の製造が困難になっている可能性が高く、保管されていたT-64も復帰が可能な個体はほとんど残っていない。キーウ、リヴィウ等の軍需工場ではT-72等の現役復帰と改修が進められているものの、ウクライナが自力で補充できる戦車の数は少ない。

 結果として西側から供与された整備・改修済みT-72に頼る状況が続いている。それも、西側諸国が東欧を中心に保有するT-72等を切り崩して供与しているのが実情で、ストックが底をつこうとしている。

 なお、ウクライナ軍はおよそ550輌のロシア軍戦車を鹵獲しているが、放棄時点で何らかの損傷を抱えていたり破壊措置が取られていたりすることが多く、再利用に耐えうる状態のものはごく一部にすぎない。整備状態も不明であることから、一時的な使用を除けば鹵獲戦車も修理・再整備が必須となるが、これはウクライナの限られた修理能力を圧迫することも意味する。このためチェコやポーランドに移送して修理する取り組みも行われているようだが、鹵獲装備の再利用はあくまでも補助的な位置づけである。

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