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【前回まで】仮想敵国は中国か――Xミッション会議の席上、統幕の井端と海自の樋口が鋭く対峙した。大臣官房・磯部の呻吟をよそに、梶野元総理は防衛費倍増、核武装発言で物議を醸す。

 

Episode1 防人の覚悟

 

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 ゴールデンウィークが終わり、初夏の青空が広がるようになった頃、磯部は樋口から護衛艦「いずも」への試乗を誘われた。

 正式名、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」は、全長 248.0メートル、満載排水量26,000トンの海上自衛隊最大の艦船だ。

 いつかは乗艦してみたいと思っていた磯部に、断るという選択はなかった。

 翌日午前11時にヘリポートに足を運ぶと、既に海自の哨戒ヘリコプターUH-60が待機していた。

「いずも」は伊豆沖で訓練中で、市ヶ谷からヘリコプターで現地に飛び、2時間ほど見学をした後、市ヶ谷に戻るスケジュールだという。

 純白の制服制帽を身に纏った樋口が出迎えてくれた。今日も、新沼がお供している。

「実は、今日は会わせたい方がおられ、機内でお待ちです」

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