(C)時事/防衛省統合幕僚監部提供[写真はイメージです]

【前回まで】防衛省大臣官房の磯部が護衛艦「いずも」の試乗で会ったのは、財政再建派の女性議員・都倉だった。防衛予算増額の必要性を認めながらも、都倉は二つの必須条件を挙げた。

 

Episode1 防人の覚悟

 

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 六月初旬――。

「Xミッション検討会議」は、防衛大臣官房長宛に、「提案書」を提出した。

 提案書では、国民の命と生活を守るため、自国を自国で守るにあたり、優先順位を設定すべし――という大命題を掲げた。

 自主防衛とは「日米安全保障条約を堅持しつつ、米国に依存せず、自国を自国の防衛力で守ること」と定義づけ、そのために、防衛費については、根本的な見直しを行うとした。まずは国民から理解を得るために、各予算に明解な説明を義務づける。また、不要不急の予算を削減及び全廃し、仮想敵国からの攻撃を現実的に想定した新規予算を編成する――とした。

「XM」で、議論が最後まで紛糾したのが、「仮想敵国の設定」だった。

 陸海空の各幕僚監部としての総意を図ると、仮想敵国は中国、ロシア、北朝鮮となる。だが、それら全てを「敵」とすると、防衛費倍増などというレベルの補強では済まなくなってくる。

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