出足は順調「オバマ」と「中南米」のこれから

執筆者:クリス・クラウル2009年6月号

前政権から「負の遺産」を継いだものの、オバマの登場で空気は一変。中南米諸国とまともな“近所付き合い”ができるようになるか。[ボゴタ発]四月十七日から十九日まで、カリブ海に面したトリニダード・トバゴで開かれた米州機構(OAS)首脳会議でのバラク・オバマ大統領の柔らかな物腰は、多くの賞賛を集めた。カナダのスティーブン・ハーパー首相はオバマが「対話の新時代」の幕を開けたと評し、コロンビアの有力紙『エル・ティエンポ』は「世界のリーダーとしてのアメリカのイメージを取り戻した」と書いた。 しかし、こうした讃辞は、アメリカと中南米諸国の間で、貿易自由化や地球温暖化対策、再生可能エネルギーの開発などで実効性のある成果が得られたからではない。せいぜい、これらの分野で何かを始めるための、「土壌」ができただけだ。 対キューバ政策でも、キューバ系移民の一時帰国や送金を解禁するなど、新たなアプローチを見せてはいるが、国交正常化に関する新たな提案はなかった。四十七年間続いてきた経済制裁を解除するような約束も一切しなかった。キューバの人権問題を理由に制裁を続けるアメリカが、人権意識の低さではキューバと変わらない中国には最恵国待遇を与えて全面的な経済関係を結んでいることは、中南米諸国にとって苛立ちの種であるにもかかわらず。

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