研究機関の枠を超えて、今後は社会性を高めていくことも必要に(「OIST」HPより)

 今回は、これまで検討してきたことを基に、OIST(沖縄科学技術大学院大学)の意味や課題などについて考察すると共に、そこから導き出される日本社会への提言等について論じていく。

OISTの意味と課題

 OISTは、ここまで論じてきたように、研究環境などとその付帯する仕組み・組織構成、そしてそれらを構成している人材および施設などが、渾然一体となって研究・教育の「場」を形成している「一つの社会」であり、「別世界」的な存在である。

 そしてOISTは、日本社会で一般的にイメージされる単なる大学ではない。ある意味で大学を超えた大学なのである。それは別の社会の仕組みが形成された「特区」であり、また日本における「出島」なのだ。

「特区」は日本では、海外におけるそれのような、既存のやり方を超えた仕組みを実践・実験する場になりきれていないが、本来は「民間事業者や地方公共団体による経済活動や事業を活性化させたり、新たな産業を創出したりするために、国が行う規制を緩和するなどの特例措置が適用される特定の地域」(出典:デジタル大辞泉(小学館))を指しており、その意味ではOISTは、正に日本の既存のやり方とは大きく異なる実践を行っている場所、「特区」なのだ。

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