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【前回まで】周防は財務省主計局に、防衛係筆頭主査として復帰した。同じく防衛係主査で防大出身の本岡は、在日米軍はもう日本を守らないから、「反撃能力」が必要だと主張する。

 

Episode2 傘屋の小僧

 

2(承前)

 正直なところ、周防は安全保障について、さほど深く考えたことはなかった。

 自国を独自で守るのは、当然だとは考えているが、戦争ができるだけの体制を保持することには、懐疑的だった。

「日本が攻撃されるなんてことが本当に起きるんだろうか」

「このところ、北朝鮮によるミサイル発射が頻発していますよね。あれを周防さんは、攻撃と思わないんですか」

「そもそも北朝鮮は、日本と戦争をする気はないだろ?」

「通常は、日本に向けてミサイルを発射すれば、それは日本と戦争も辞さないという意味に取りますよ。日本国民は、深刻な事態を考えたくないから、勝手に都合の良い解釈をしているだけに過ぎません」

 相当デリケートな話をしているのに、本岡の発言には、迷いがない。元々、そういうタイプではあったが、さすがに極論が過ぎる。

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