連載小説 オペレーションF[フォース] 第9回
2023年4月22日

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【前回まで】防衛省の概算要求は前回比300%――。折衝開始の前日、周防を訪ねてきた防衛省の久埜課長の傍らには、親友の磯部がいた。その晩、周防と磯部は新橋の焼き鳥屋で語り合う。
Episode2 傘屋の小僧
4(承前)
いつの間にか、二人とも飲む手が止まり、ジョッキが汗をかいている。
磯部が足下の鞄から、分厚い封筒を取り出した。
「官房長の許可は取ってある。ぜひ、読んでもらえないか」
「分かった。明日までに読んで備えるよ」
ずっしりと重いものが周防の手に託された。
ならば、酒なんて飲んでる場合じゃないな。周防はビールをやめて、ウーロン茶に切り換えた。
「それにしても、こんな大事な時期に筆頭主査が交代したのがどうにも解せない。何か知らないか」
「さすがに短期間での異動は妙だと思ったけど、よくは知らないんだ」
丸谷は、防衛係に就いて半年足らずだった。来年度の防衛予算は重要な政治課題であると承知しているだけに、この異動は何か「事件」があったのではと周防も感じていたが、引き継ぎの時に本人に聞くのは気が引けた。
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