激戦地だった糸満の琉球家屋前で筆者(右端)と並ぶ多原母子 ©浜田哲二

 

待ち去られたアイヌの遺骨は2000体以上

 初めて遺骨収集に参加した良子さんに、アイヌ遺骨問題のことを改めて尋ねてみた。

「勝手に持ち去られた私たちの先祖の遺骨や副葬品は、その多くが誰のものか判らない状態で研究材料にされていました。野生動物の標本などと一緒に並べられて……」

 良子さんはそう言って怒りをにじませた。

 北海道大学などの研究機関が持ち去ったアイヌの遺骨は2000体分以上とされている。先住民族の権利に関する2007年の国連宣言では、「先住民族は遺骨の返還に関する権利を有する」との規定が採択された。現在、国や当該の研究機関が責任をもって、アイヌ民族の遺骨を返す手続きを進めている。

 そして2019年、道内の白老町にウポポイ(民族共生象徴空間)が建設された。そこに慰霊施設を設けて、「直ちに返還できない遺骨等はウポポイに集約し、アイヌによる尊厳ある慰霊の実現を図ると共に、受入体制が整うまでの間、適切な管理を行う」との国の方針が示された。

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