アイヌ女性と沖縄戦――「未帰還遺骨」が照らし出す大日本帝国の暗部(後編)

執筆者:浜田律子
執筆者:浜田哲二
2023年4月23日
タグ: 人権問題 日本
エリア: アジア
激戦地だった糸満の琉球家屋前で筆者(右端)と並ぶ多原母子 ©浜田哲二
戦死した義理の叔父の遺骨を探すため、北海道から沖縄へやってきたアイヌの血を引く女性。彼女の口から語られたのは、マイノリティーとして生きる人々が経験した過酷な運命と、弱者を翻弄する大国のエゴへの怒りだった。(前編はこちらからお読みいただけます)

 

待ち去られたアイヌの遺骨は2000体以上

 初めて遺骨収集に参加した良子さんに、アイヌ遺骨問題のことを改めて尋ねてみた。

「勝手に持ち去られた私たちの先祖の遺骨や副葬品は、その多くが誰のものか判らない状態で研究材料にされていました。野生動物の標本などと一緒に並べられて……」

 良子さんはそう言って怒りをにじませた。

 北海道大学などの研究機関が持ち去ったアイヌの遺骨は2000体分以上とされている。先住民族の権利に関する2007年の国連宣言では、「先住民族は遺骨の返還に関する権利を有する」との規定が採択された。現在、国や当該の研究機関が責任をもって、アイヌ民族の遺骨を返す手続きを進めている。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
浜田律子(はまだりつこ) 元読売新聞記者。1964年生まれ 奈良女子大学理学部生物学科・修士課程修了。
執筆者プロフィール
浜田哲二(はまだてつじ) 元朝日新聞カメラマン。1962年生まれ。2010年に退職後、青森県の白神山地の麓にある深浦町へ移住し、フリーランスで活動中。沖縄県で20年以上、遺骨収集を続けている。日本写真家協会(JPS)会員。
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