尹政権内で影響力を強めていると見られる金泰孝・国家安保室第1次長(C)EPA=時事
 

「戦後最悪」と評されていた日韓関係が、改善に向けて大きく動き出している。最大の懸念となっていた元徴用工の訴訟問題について、韓国政府が解決策を発表したことが、状況を一気に変化させた。昨年5月に就任した尹錫悦大統領は、日本を重視する姿勢を鮮明にし、元徴用工問題についても「早期解決」を主張してきた。強力なリーダーシップで自らの路線を貫いた形になるが、尹氏の政治手法に対しては、韓国の外交部や大統領府といった政府中枢からも「あまりに拙速だ」という懸念の声が上がっている。

突然辞任した金聖翰・国家安保室長

 今年の3月は、日韓関係にとって「激動の1カ月」だった。

 韓国政府は3月6日、元徴用工問題について、被告である日本企業の賠償支払を政府傘下の財団が肩代わりする解決策を発表し、日本政府はこれを評価する考えを速やかに表明した。その3日後に韓国が尹大統領の訪日を発表し、16日には、日本での開催は約5年ぶりとなる日韓首脳会談が開催された。

 首脳会談では、11年以上途絶えていた首脳同士の相互訪問である「シャトル外交」の再開で一致し、北朝鮮をにらんだ安全保障協力の推進や、外務・防衛当局による安保対話の早期再開も確認した。さらに、日本政府は半導体関連材料の対韓輸出規制強化を解除するとも発表している。輸出規制強化は、韓国で元徴用工訴訟に対する日本の「報復措置」として受け止められ、日本製品の不買運動など強い反発を招いた。

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