米イリノイ州のフィールド自然史博物館に展示されているティラノザウルス「スー」の骨格(C)REUTERS
 

[ワシントン発(ロイター)] ティラノザウルスや近縁種の恐竜が、笑ったり、口をへの字に曲げたりすることはおそらくなかっただろうが、新しい論文によって、少なくとも恐竜版の「唇」があったことが示唆された。ティラノザウルスをはじめとする肉食恐竜たちは、恐ろしい歯を口から覗かせている姿で描かれることが一般的だが、そうしたイメージを覆すような内容だ。

 論文は、3月30日に学術誌「Science」で発表された。研究チームは、全ての肉食恐竜を含む「獣脚類」と呼ばれる恐竜の頭蓋骨や顎の構造、歯のすり減り方のパターン、そして歯と頭蓋骨の大きさの関係という3種類の根拠を用いて、唇のような構造があったと主張している。

 論文の筆頭著者であるオーバーン大学古生物学者のトーマス・カレン氏は、こう語る。

「我々の研究は、獣脚類の恐竜が口を閉じていたときに、歯が剥き出しになっていなかったことを示唆しています。恐竜の唇は哺乳類のものとは異なり、歯を覆いつつも独立して動かすことができなかったと思われます。例えば、唇を曲げ歯をむき出しにして威嚇する表情や、人間や他の哺乳類で思い浮かべるような唇の動きはできなかったはずです。唇という構造や言葉そのものは、我々人間のような哺乳類に関連づけて考えられることが多々ありますが、恐竜の唇はどちらかといえば多くのトカゲや両生類に似ていたと考えられます」

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