中国主導のサウジ・イラン合意がインドにとって持つ意味

執筆者:ジャガンナート・パンダ(Jagannath Panda)2023年5月4日
中国が西アジアの地域政治における支配的なプレーヤーとして台頭すれば、インドの国益を操ることのできる手段を得ることになる(C)EPA=時事
 

 中国の仲介によってシーア派とスンニ派それぞれのリーダーであるイランとサウジアラビア――が3月に和平合意に至ったことは、確かに驚くべき成果だ。

 この合意はサウジアラビア王国、イラン・イスラム共和国、中華人民共和国の三者共同声明で強調されている通り、有力なシーア派聖職者ニムル・アルニムル師がサウジで処刑されたことをきっかけに7年間、完全に崩壊していたサウジとイランの外交関係の早期再開(2カ月以内)をもたらすものとなる。

 今回の合意は、2001年の安全保障協力協定と1998年の総合協力協定の再活性化による多角的な協力活動に加え、相互の主権尊重と内政不干渉――中国外交の常套句であることに要注意――も含む。そのため、この地域の緊張を大幅に緩和する可能性を持っている。

 同時に、国連事務総長までもが中国の和平と対話促進への貢献に言及したが、こうした中国の影響力の高まりは、サウジにとってのインド太平洋地域の同盟国である米国やパートナー国であるインドが長らく拠点としてきた地域への影響力を失っているのではないかという動揺と疑問をもたらすものだ。イラン・サウジ・中国の三者合意は、外交的なブレークスルーにとどまるのか。この協定がインドに与える戦略的影響はどのようなものか。 インド・イスラエル・UAE(アラブ首長国連邦)・米国というI2U2の四極はインパクトを受けるのか。

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