(C)時事[写真はイメージです]

【前回まで】暁光新聞政治部の草刈は、産休から復帰早々に、焦点となっている防衛費増額問題の担当を命じられる。政治部長の茨木は、子を持つ母の視点での記事が必要だと説く。

 

Episode2 傘屋の小僧

 

10

 第2回目の折衝の翌朝、周防は松平に呼ばれた。

「官邸に行きます。君も同行して下さい。5分後に出発です」

 問答無用だった。その様子を見ていた本岡が新聞を見せてくれた

「この記事のせいだと思います」

   自国民の命を守るための覚悟に欠けた総理を憂う

 日本最大の部数を誇る東洋新聞の主筆が、朝刊一面で吠えていた。

「マジで?」

「だって、『フラフラ殿下』ですから」

 現総理の大迫泰三[おおさこたいぞう]のあだ名だった。メディアや世論、財界、さらには保守党の大物議員に批判されると、フラフラと持論を変えていく姿勢を揶揄された。そして、「殿下」は、4代目の世襲議員という意味と、容貌が藤子・F・不二雄の漫画「ウメ星デンカ」に似ているとSNS上で話題になって命名されたらしい。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。