『フランス革命の省察』エドマンド・バーク著/半澤孝麿訳みすず書房 1978年刊(原書は1790年刊。なお本稿中の一部の引用は評者要約) 村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』を読み返すたびに、フランス革命を根底から批判したエドマンド・バーク(一七二九―九七)を思い出す。 村上の小説は、主人公の「僕」が一九六八年に大学に入学してからの約二年間を、十八年後に回想する物語だ。「一〇〇パーセントの恋愛小説」と謳われたが、深い「喪失」の物語であり、愛と生と死の思索でもある。六八年から七〇年という大学紛争がもっとも激しくなった動乱の時代が背景だ。しかし、そのことにはほんの少ししか触れず、ストーリーは進む。それがあの時代への鋭い批判となっている。「革命ごっこ」の次のような描写は、たぶん村上自身の当時の思いだろう。 授業を中断させ、アジ演説をする学生を見ながら、「僕」はこう思う。「この連中の真の敵は国家権力ではなく想像力の欠如だろう」。機動隊が大学のバリケード封鎖を叩きつぶし、授業が再開されると、きのうまでスト反対学生をつるし上げていた活動家たちが、のこのこと講義に顔を出している。「彼らは出席不足で単位を落とすのが怖いのだ。そんな連中が大学解体を叫んでいたのかと思うとおかしくて仕方なかった。そんな下劣な連中が……」。

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