ブックハンティング・クラシックス (50)

近代保守主義の金字塔は『ノルウェイの森』とも照応する

執筆者:会田弘継 2009年6月号

『フランス革命の省察』エドマンド・バーク著/半澤孝麿訳みすず書房 1978年刊(原書は1790年刊。なお本稿中の一部の引用は評者要約) 村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』を読み返すたびに、フランス革命を根底から批判したエドマンド・バーク(一七二九―九七)を思い出す。 村上の小説は、主人公の「僕」が一九六八年に大学に入学してからの約二年間を、十八年後に回想する物語だ。「一〇〇パーセントの恋愛小説」と謳われたが、深い「喪失」の物語であり、愛と生と死の思索でもある。六八年から七〇年という大学紛争がもっとも激しくなった動乱の時代が背景だ。しかし、そのことにはほんの少ししか触れず、ストーリーは進む。それがあの時代への鋭い批判となっている。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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