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【前回まで】官邸に呼び出された周防たちは、「フラフラ殿下」こと大迫総理の面前で、舩井防衛相から防衛費増額を認めるよう迫られる。財務相は抵抗を見せるが、総理は防衛相に与した。

 

Episode2 傘屋の小僧

 

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 2022年8月7日――。

 日本人は8月になると戦争を思い出す。77年前のこの月、原爆が投下され、15日に終戦を迎えるという、この悲劇の歴史があるからだ。テレビでは、戦争関連の特番やドラマが流れ、新聞や雑誌も、戦争特集を組む。

 今年も例年通り、戦争の記憶があちこちで叫ばれているが、周防は、いつもと違う感覚で戦争を意識していた。

 今そこにある危機として、日々向き合っているからだ。 

 戦争なんて起きるわけがない。

 多くの日本人はそう思っている。だが周防はその確信が揺らいでいる。

 昨夜、原爆特集のテレビ番組を見た時も、平常心でいられなかった。

“それまでの戦争とは、軍人同士の戦いであり、そこには一定のルールがあった。それが、第二次世界大戦によって完全に破られた”というナレーションの言葉は、周防に重くのしかかってきた。

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