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【前回まで】北朝鮮のミサイルが新潟県沿岸に飛来した。イージス艦からの迎撃は失敗したが、ミサイルは弾着直前に爆発。この事態にも、草刈が出席した官房長官会見の空気は緩かった。

 

Episode2 傘屋の小僧

 

12 (承前)

 草刈はひとまず、混乱した頭を整理していた。

 戦争って、こんな風に始まるのだろうか。

 高らかに進軍ラッパが鳴り響き、戦争が始まるようなことは、歴史を見ても稀だ。

 軍隊が国境を侵し、それを迎え撃つ形で戦争は始まる。近代以降、まず「宣戦布告」をするのが、外交上のルールとされるが、旧日本軍の真珠湾攻撃のような形が、「異例」というわけではない。

 なぜなら、戦争とは結果が全てを凌駕してしまうものだからだ。

 だとすると、攻撃を受けた側の日本が暢気に「我々は北朝鮮と戦争するつもりはない」などと断言していいものだろうか。

「よう、ご無沙汰」

「あっ! 星君、ご無沙汰」

 NHKの記者である星とは、同期だったこともあって、親しくしていた。安全保障担当が長く、草刈が産休に入る前から、防衛省記者クラブに所属していた。

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