2019年11月、ブラジル・サンパウロ大学JICAチェアで、マサト・ニノミヤ教授(左)に感謝状を贈呈[写真提供・JICA、以下同]

開発大学院連携をさらに進めた「JICAチェア」構想

 開発大学院連携が始まると、外国での評判はとてもよかった。ヨルダンのアブドッラー2世国王やルワンダのポール・カガメ大統領は、放送大学と一緒に作った番組を、自国の国営放送で放送したいと言ってこられた。しかし、これは放送大学との番組作りの際の契約や著作権問題などがからんで、かなり面倒かつ高価になりそうだった。

 それで、いっそ、こうした国々の有力大学に、日本について学べる講座を作ったらどうかと考えた。JICA(国際協力機構)の海外拠点は96ある。その全てに日本研究講座を作ろう、と私は言い始めた。しかし、途上国の中には大学がない国もあるし、複数の大学で講座ができる国もある。将来的には100拠点での設置を目標としているが、2023年5月現在、71の講座がすでにできている。これがJICAチェア(JICA日本研究講座設立支援事業)である。

 そこで何をするかというと、第一に、日本について書かれたよい本を寄付する。これは、日本財団が2008年から、日本について英語で書かれた本を100冊選び、世界の大学や図書館に寄贈するというプロジェクト(Read Japan Project)を始めていて、さらに200冊と拡大していたので(現在は東京財団政策研究所で行われている)、これに乗せてもらうことにした。私もその第一期の選定には関わったので、その質の高さはよく知っている。

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