新・日本人のフロンティア (23)

日本の近代化経験を共有する――開発大学院連携とJICAチェア(下)

執筆者:北岡伸一 2023年7月9日
カテゴリ: 社会 カルチャー 政治
エリア: その他
2019年11月、ブラジル・サンパウロ大学JICAチェアで、マサト・ニノミヤ教授(左)に感謝状を贈呈[写真提供・JICA、以下同]
途上国各国に日本を学べる講座を開設する――こうして誕生したのが「JICAチェア」だ。一流の講師による講義と交流で、近代化の経験を学びつつ日本への留学の意欲を高める。このような様々な試みで、日本を開発学の中心にしていくことが必要だ。(日本の近代化経験を共有する――開発大学院連携とJICAチェア(上)は、こちらからお読みいただけます)

開発大学院連携をさらに進めた「JICAチェア」構想

 開発大学院連携が始まると、外国での評判はとてもよかった。ヨルダンのアブドッラー2世国王やルワンダのポール・カガメ大統領は、放送大学と一緒に作った番組を、自国の国営放送で放送したいと言ってこられた。しかし、これは放送大学との番組作りの際の契約や著作権問題などがからんで、かなり面倒かつ高価になりそうだった。

 それで、いっそ、こうした国々の有力大学に、日本について学べる講座を作ったらどうかと考えた。JICA(国際協力機構)の海外拠点は96ある。その全てに日本研究講座を作ろう、と私は言い始めた。しかし、途上国の中には大学がない国もあるし、複数の大学で講座ができる国もある。将来的には100拠点での設置を目標としているが、2023年5月現在、71の講座がすでにできている。これがJICAチェア(JICA日本研究講座設立支援事業)である。……

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執筆者プロフィール
北岡伸一(きたおかしんいち) 東京大学名誉教授。1948年、奈良県生まれ。東京大学法学部、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連代表部次席代表、国際大学学長等を経て、2015年より国際協力機構(JICA)理事長、2022年4月よりJICA特別顧問。2011年紫綬褒章。著書に『清沢洌―日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党―政権党の38年』(吉野作造賞受賞)、『独立自尊―福沢諭吉の挑戦』、『国連の政治力学―日本はどこにいるのか』、『外交的思考』、『世界地図を読み直す』など。
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