シンガポールとの連携が進む重慶の街並み。真ん中のビルはシンガポールの投資プロジェクトで建設された大型複合施設ラッフルズシティ(C)Govanz/shutterstock.com

 

拡大するシンガポールの対中投資

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の経済関係が重みを増すなかで、シンガポールの役割が際立ちつつある。ASEAN諸国の一部は中国への地政学的な警戒感を持つ一方で、膨張するその経済的引力に抗うことは難しく、「一帯一路」構想もASEANとの間では着実に進展しつつある。この経済関係の拡大のなかで、重要な役割をはたしているのがシンガポールである。

 シンガポールは、1970年代末に「建国の父」リー・クアンユーが、改革開放政策を推し進めようとしていた鄧小平と会見・意気投合して以降、中国の経済的可能性にいちはやく注目し、積極的に関与してきた。たとえば、両国合弁で1994年から始動した中国初の本格的工業団地「蘇州工業園区」は、シンガポールの経済開発における工業団地造成・産業集積ノウハウを提供したものであった。

 さらに21世紀、特に2010年代に入ると、シンガポールの対中直接投資残高は急拡大する。この結果、2021年のシンガポールによる対外直接投資の残高総額1兆2514億シンガポールドル(Sドル、当時約102兆6000億円)のうち、中国向けは1955億Sドル(当時約16兆円、全体シェア16%)を占める。これに対中投資窓口である香港向けの756億Sドルを加えると22%を占め、圧倒的な最大投資先となっている。

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