現在の国際秩序の維持を求めるアメリカと、多極的な世界にすることでアメリカの地位を低下させたい中国の隔たりは大きい[訪中し中国の李強首相(右)と握手するイエレン米財務長官=2023年7月7日、中国・北京](C)EPA=時事

 

 世界はきな臭い空気に覆われている。近現代史を3つの期間に区切るとすれば、戦前、戦時(大戦期)、戦後に分かれる。第2次世界大戦後から近年まで、国際社会は「戦後」を生きてきた。国連を始めとする戦後システムのもと、大戦の再発はかろうじて防がれ、世界は繁栄することができた。

 しかし、昨年2月24日、ロシアがウクライナに侵略したことによって、戦後は終わってしまった。国連安全保障理事会の機能は壊れ、私たちは「戦前」に突入したといえる。人類は歴史の針が「戦時」(第3次大戦)に進むのを防げるか。本稿では主に米中の視点から、その見通しについて考えてみたい。

「恒久的に準戦時化」という欧州の懸念

 5月にロシアに隣接するエストニア、6月には英国を訪れ、政治家や軍幹部、識者らに取材する機会があった。そこで改めて痛感したのが、ウクライナでの戦争が世界にもたらしている脅威の深刻さである。欧州ではロシアへの対応を誤れば、戦火がさらに広がり、第3次大戦への扉が開きかねないという懸念が漂っている。遠く離れた日本ではそうした切迫感は薄いが、残念ながら欧州の認識の方が現実に近いように思う。

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