*佐伯啓思氏の講義をもとに編集・再構成を加えてあります。

 

「自由主義」対「権威主義」

杉谷和哉(以下、杉谷) ウクライナ戦争が始まって1年(編集部注:この講義の公開は2023年3月10日)。ロシア軍は一時キーウに迫ったものの、ウクライナ軍の抵抗により、一進一退の攻防が続いています。

 その間、日本では様々な論調が見られました。これは「自由主義」対「権威主義」の戦いである、日本は西側の一員として自由民主主義を守らなければならない、という見方がある一方、これはアメリカが仕組んだ戦争である、という見方もあり、混乱した状況にあると思います。

 佐伯先生は極端な議論から距離をとりながらも、ウクライナ戦争に関する論考を発表し続けておられます。今の状況をどうご覧になっていますか。

佐伯啓思(以下、佐伯) 西側の自由民主主義を守る戦い、あるいは専制国家、強権国家との戦いであるという見方が圧倒的に強いと思います。またそれに異を唱えるつもりもありません。ウラジーミル・プーチンがいきなりウクライナを侵略したことは間違いなく国際法違反。病院等を爆撃しているのも人道的に相当問題がある。

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