イラクの原油埋蔵量は世界第5位、中東ではサウジとイランに次ぐ埋蔵量が確認されている[2023年5月18日=イラク南部ズベイル油田](C)AFP=時事

 ロシア・ウクライナ戦争は、国際エネルギー市場を通じて中東産油国にも大きな影響を及ぼしている。欧米諸国の制裁によって行き場をなくしたロシア原油は大需要地アジアへと向かい、世界の石油貿易フローは大きく転換することとなった。その結果、中国とインドで有数の原油供給国としての地位を築いてきたイラクは、アジアにおけるロシア原油との市場シェア競争に直面している。

 国際石油市場での対応を迫られるイラクは、国内の石油開発においても10年以上にわたって外国企業の撤退に悩まされてきた。契約条件の悪さ、南部輸出ターミナルの老朽化、安定しない国内情勢……山積する課題は、数多くの外国石油会社がイラクの豊富な資源ポテンシャルを諦めるきっかけとなっている。シェルやエクソンモービルといった「石油メジャー」に続き、マレーシアのペトロナスも南部ガラフ油田からの撤退を求めている。今や、イラクの石油開発に活発に参画しているのは中国企業のみである。

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