連載小説 オペレーションF[フォース] 第24回
2023年8月5日
【前回まで】祖父の桃地を説得して防大に進み、海自の幹部候補生となった樋口梓二佐。IMFから転じて、桃地財団の理事となっていた中小路流美。二人は周防の訪問を待ち構えていた。
Episode3 リヴァイアサン
7
東急田園都市線池尻大橋駅を出た磯部の眼に、派手派手しい幟の文字が飛び込んできた。
“軍拡反対!“
“憲法九条を守れ!“
“軍拡増税 許さない!“
「みなさん、我々日本人は平和を愛する国民であるという誇りを、置きざりにしていませんか」
マイクを握りしめる女性が必死で訴えているが、誰も足を止めない。
「軍拡」という文字に磯部は違和感を覚えた。実際、防衛費を増やそうとしているのだが、今回の場合、「軍拡」とは捉えていない。
むしろ、遅れに遅れていた安全保障の備えを少しは充実させるための防衛費増だ。言ってみれば、穴だらけの防衛力を補強するという方が的確だった。
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