(C)AFP=時事[写真はイメージです]

【前回まで】財務省主計局の周防は、SF作家・桃地が遺した未完の原稿を見せられ、そこに託された遺志を必死に探る。主税局調査課の土岐は、防衛費増額の財源問題で苦闘していた。

 

Episode3 リヴァイアサン

 

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 3ヵ月後――。

 暦が11月に入ると、頬を打つ風が急に冷たくなった。だが、この3ヵ月の大半を主税局と保守党本部の往復に費やしている土岐には、季節を感じる余裕すらなかった。

 思い詰め自分を追い込んではいけない。こういう時こそ、平常心が大切だ――とは思うものの、さすがにやることが多すぎた。

 この日は、事務次官の岡山以下、主税局長の我妻智徳[あずまとものり]、調査課長・枚岡瑞恵[ひらおかみずえ]と共に保守党本部に向かっていた。防衛問題特別チームから呼び出されていたのだ。

 このチームは、防衛費倍増以上を訴える自主防衛推進派議員で組織され、その代表には党憲法改正推進本部長を務める三神諒子[みかみりょうこ]が就いている。

 彼女は日本初の女性総理を狙っており、「防衛費増は、国債で賄う」という梶野発言は政治家としてのまさに「遺言」であり、それを継承するのが自分の天命だと宣言している。

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