ウォール街から始まったリーマン・ショックに対し、LIBOR不正事件の衝撃はロンドンの金融街から広がった(C)AFP=時事

 

 2012年6月、リーマン・ショックのほとぼりも冷めやらない国際金融市場を新たに揺るがしたロンドン銀行間取引金利(LIBOR、ライボー)不正操作事件。その渦中に巻き込まれた多数の元トレーダーの中に、日本人がいることはほとんど知られていない。その人物は不正に関与したとして米国で起訴され、日本から出るに出られず、約10年にわたって仕事でも私生活でもさまざまな制約を強いられた。家族も当然、多大な犠牲を余儀なくされた。

 しかし法律事務所を通じて米司法省との間で粘り強く話し合いを重ねた結果、このほど、起訴の全面的な取り下げを勝ち取った。ビジネス分野の刑事事件で、米司法省を相手に裁判を通じて無罪判決を勝ち取るのはそれほど珍しいことではないが、日本人が司法取引など相手の土俵に上がることなく、水面下での交渉を通じて「勝ち」を収めるのは極めて異例だ。

芋づる式に摘発された関係者

 LIBORは銀行同士が期間1日から1年までの貸し借りをする際の金利指標だ。ドル、ユーロ、円など5通貨について、それぞれ7つの期間の金利が毎営業日、算出・公表されていた。原型は1969年、イラン向けのシンジケートローン(協調融資)に使われたドル金利決定方式で、規制が緩やかな英ロンドン市場で誕生し、運営は当初、民間業界団体の英銀行家協会(BBA)が担っていた。

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