全国組織JA共済連の作ったノルマが各県本部を通じて各地のJAに割り振られる[JA共済ビル(東京都千代田区)](C)時事通信フォト

 JA(農業協同組合)職員が共済(保険)事業の過大なノルマをこなすため、嫌々ながら不必要な契約を結ぶ「自爆」と呼ばれる営業。農林水産省はJA共済の運用に関する監督指針を改正して、それを「不祥事件」と定めた。ところが、上司から自爆を強要されているという声はいまだに消えていない。

職員の犠牲で成り立つ共済事業

「監督指針が改正されたけど、うちの農協はなにも変わっていないですね。ノルマを達成するため、上司が部下にけしかけてくるんです。『どうするんだ、どうするんだ』って」

 こう打ち明けるのは、JA福井県(福井市)で共済の営業を専門にする「LA(ライフアドバイザー)」と呼ばれる職種に就いているAさんだ。

 同JAは2020年4月、福井県内の10のJAが合併して誕生した。組合員数が約10万人、職員数が約2000人の大型農協である。

 同JAの長期共済保有高は2兆5847億円 (2022年度実績)に及ぶ。ただ、これは顧客への地道な営業の成果であると評価するわけにはいかない。というのも、実際には多くの職員の犠牲によって出来上がったものであるからだ。

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