小泉悠×小谷賢:サブカルで語る国際政治――なぜ日本人は戦争を正面から描けないのか

【関西大学東京センター×論壇チャンネルことのは】

執筆者:論壇チャンネルことのは2023年8月23日

※小泉・小谷両氏の対談をもとに編集・再構成を加えてあります。

 

小泉悠(以下、小泉) 私はロシア軍、小谷さんはイギリスのインテリジェンス史が専門ですが、今回は「サブカル」をテーマに国際政治を語ってほしいという依頼です。

小谷賢(以下、小谷) たしか、前回お会いした時にエヴァンゲリオンの話で盛り上がったんですよね。それでこういう対談が企画されたわけです。さて、何から話しましょうか。

原点は「軍都」千葉とガンダム

小泉 僕は軍事オタク、中でもロシア軍のオタクですが、多くのロシア軍オタクって戦車オタクなんですよ。ただ、僕の場合は戦車から入ったわけではなく、アポカリプス(=いわゆる人類絶滅もの)映画が入り口でした。スタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』(1964年)とか、ネビル・シュート原作の『渚にて』(1959年)とか。

 ああいう世界観に惹かれたのと、あとショーン・コネリーが出ていた『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)の大ファンだったので、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に代表されるロシアの戦略核兵器に関心を持ち、核戦略の研究をしていました。だから、庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997年)の終わり方は非常にハマった。

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