「黒海穀物イニシアティブ」期限切れ当日の17日未明に発生したクリミア橋での爆破事件で、プーチン政権は引くに引けなくなったか (C)AFP=時事

 

 ロシア外務省は7月17日、黒海を通じたウクライナ産農産物の輸出に関する国際合意「黒海穀物イニシアティブ」の延長に反対するとの声明を発表した。過去1年間、ウクライナにとって希望の光となってきた輸送路が、ついに閉ざされたことになる。

 思えば、2022年2月24日にロシアがウクライナへの全面軍事侵攻を開始して以降、ウクライナの農産物輸出はロシアの妨害により翻弄され続けてきた。

顕著な回復を見せていたウクライナの穀物輸出

 侵攻開始に伴い、ロシア軍が黒海を封鎖したことから、ウクライナの港湾から農産物を積み出せなくなり、2000万トン以上の食料が港に滞貨する事態となった。2021年までウクライナの穀物および植物油の輸出は、ほぼ全面的にオデーサ港、ピヴデンヌィ港、チョルノモルシク港、ミコライウ港から行われていたわけで、その大動脈が塞がれたのだ。

 難局に直面し、ウクライナも代替輸出ルートの開拓を急いだ。まず、農産物をルーマニアやブルガリアの港まで陸路で運んで、そこから輸出することが試みられた。また、レニ、ベルジャンシクというウクライナ側のドナウ川港湾で船積みし、ドナウ川を遡ってルーマニア領に入り、ルーマニア側のドナウ~黒海運河で黒海に運び出すことも試みられた。さらに、2022年7月にウクライナが黒海に浮かぶ蛇島を奪還したことによって、それと向かい合わせの位置にあるウクライナ側のドナウ~黒海運河も使用可能になった。しかし、いかんせんこれらの河川港は小規模であり、河川を航行できる船も小型のものに限られ、輸送量には限界があった。

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