陳文清・党中央政法委員会書記の重用は国家安全部門の台頭を象徴している[2019年12月18日、イラン・テヘラン](C)AFP=時事

 多くの識者が、習近平政権の特徴の1つとして「安全」に対する強い関心を指摘する。確かに、その通りだ。党と社会の管理を強化してきたのは、そうすることで党中央の考え通りに全体が動くようにするためだが、同時に国の内外の安全に対する強い懸念があったためでもある。

影響力を格段に強めた「国家安全部」

 2012年に総書記に就任した後、13年に「国家安全委員会」の設置を決定したが、これは習近平の強い意向だったと推測できる1。国家の安全、とりわけ体制の安全に強い関心を持つ習近平にとり、当時の状況は惨憺たるものに見えたであろう。国家安全に関するトータルな考えもなく、党と政府の組織もバラバラであり、しかも腐敗体質は蔓延している。外からの浸透に対する備えにも、また国内の対応にも、現状は甚だ不十分だと思ったはずだ。そもそも江沢民時代から「国家安全委員会」という国家安全を統合的に見る組織の設置の必要性が指摘されたにもかかわらず、先送りされてきたところに問題があった。

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