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【前回まで】対馬沖で起きた地元漁船と台湾海軍潜水艦の衝突事故。防衛大臣の舩井は護衛艦「みずほ」の出動を主張した。官邸に現れた米軍の基地司令も自衛隊の軍事行動を要求する。

 

Episode4 カナリア

 

2(承前)

 結局、物別れの状態で話し合いは終った。部屋から引き上げる上官を見送っていた磯部に、バーンズが声をかけてきた。

「セージ、それにしても、もう少し、別の対応の仕方があったんじゃないのかな?」

 親日派であるし、中国との関係も、平和維持を基本姿勢にしているバーンズとは思えない発言だった。

「そうかな? 私としては、官邸まで基地司令が乗り込んでくること自体に、違和感があったけど」

 アメリカ留学時代からの友人でもあるバーンズは、磯部にとって、気を遣わずに話せる相手である。

 無論、バーンズの所属が、国防情報局(DIA)であるのも知っている。

「私が言いたいのも、まさにそこだよ。わざわざ基地司令が官邸まで足を運んだのに、木で鼻を括ったような対応は、失礼だろう?」

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