(C)AFP=時事[写真はイメージです]

【前回まで】舩井防衛大臣は、中国軍の国境侵犯には自衛隊が対処すると米軍に約束していた。記者会見でも暴言を並べ立て、引きずり下ろされる。草刈は防衛省の磯部に電話をかけた。

 

Episode4 カナリア

 

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 “ちょうど電話しようと思っていたんだ。今どこ?”

 本省の会見室の前だというと、磯部は防衛省の薬王寺門前に、公用車を止めるから、そこまで来て欲しいと言った。

 磯部とこれから会うと、児玉に報告してから、草刈は会見場を後にした。

 午前1時に近い時刻なので、さすがに国防の砦も寝静まっている。

 それにしても、磯部の用件とは何だろう。

 今まで、記事の精度を上げるために、かなり世話になった。それだけに、ある程度の無理には応えるつもりだが、相当な無理を押し込まれるかも知れない。

 例えば、もっと高度な防衛問題についての記事の要請か。

 だが、そんな重たい記事は今どき流行らないのだ。価値観が多様化し、「お国のために尽くす」などと考える国民が減り続ける現代において、防衛問題を我が事として意識させるためには、大所高所からの記事では、何の発信力も持たない。

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