ベアボック外相、ハーベック経済・気候保護相の属する緑の党は、中国の人権問題に厳しいスタンスをとっている[連邦内閣の非公開会合で同席する(左から右へ)ベアボック氏、ハーベック氏、ショルツ首相=2023年8月30日、ドイツ・メーゼベルク](C)EPA=時事

 ロシア・ウクライナ戦争開始以来、中国は外交的にはロシアを支援し続けており、次第に立場を接近させてきた。それにも関わらず、欧州主要国の対中外交は、対露外交ほどには急速には転換していない。ショルツ首相自身、本稿前編で述べたフォーリン・アフェアーズ誌論文の中で、新たな冷戦はあり得ず、世界は多極化の時代を迎えている、と述べている。そのような中で、ドイツが今年6月に『国家安全保障戦略』を、そして7月に入って『中国戦略』を相次いで発表したことは注目された。

シュレーダー路線に忠実であろうとする社民党と緑の党

 実はこの二つの文書は、当初は今年の初め、2月頃に出される予定であった。2月には例年、欧州で最大規模のミュンヘン安全保障会議が開催されるため、その場で発表したいという気持ちがあったらしい。対中戦略策定の計画は、そもそも2021年11月の連立交渉にまで遡る。連立協定文書の後半、「外交、安保、防衛、開発、人権」の部分で、「新しい包括的な中国戦略」が必要であると述べられていた。

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