インドネシア南スラウェシ州ソロワコにあるPT Vale Indonesia社のニッケル採掘場。同社は国内最大規模のニッケル生産者であり、華友コバルトなど中国企業との合弁会社よる製錬所の建設を進めている[2023年7月28日](C)EPA=時事

 インドネシアは石炭やパーム油の輸出大国であり、ほかにも石油・天然ガス、ニッケル、銅、ボーキサイトなど様々な鉱産資源を産出する。しかし今日のインドネシア政府は、かつてのように自国の天然資源を外貨獲得のための重要な一次産品としてのみ捉えているわけではない。現在では、特に鉱物資源を利用して海外からの投資を誘致し、産業を発展させる戦略を取っている。鉱物資源はそのための「原料」であり、また「燃料」でもある。

 こうしたインドネシアの資源政策の転換は、前スシロ・バンバン・ユドヨノ政権期(2004-2014年)に始まった。現在では、ジョコ・ウィドド政権(以下ではジョコウィ政権と呼ぶ)の資源外交における3つの政策基盤を形成している。1つはエネルギー安全保障、すなわちエネルギー資源の安定的な国内供給の確保である。もう1つは新・再生可能エネルギーへの転換である。この2つはインドネシアのエネルギー政策の柱であり、特に化石燃料(石油、天然ガス、石炭)に関する政策の根幹をなす¹。そして3つ目は、鉱物資源の高付加価値化である。インドネシア政府は、ニッケル、ボーキサイト、銅などの鉱物資源の加工産業を強化し、資源輸出国からの脱却と経済発展を目指している。インドネシアの資源政策は、一見すると流動的に見える部分があるかもしれないが、実際にはこの3つの政策柱のいずれかに沿って展開している。2024年2月には新たに大統領が選出されるが、この3本柱が根本的に見直されることはおそらくないだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。