野党「市民プラットフォーム」が呼びかけた歴史上最大のデモ「100万の心の行進」で集まった市民を前に挨拶するドナルド・トゥスク元首相[10月1日、首都ワルシャワにて](C)AFP=時事

 2023年10月15日に行われるポーランドの総選挙を前に、選挙戦は混迷の様相を呈してきた。2015年以降、長期にわたって保守・ポピュリスト政党の「法と正義」(PiS)が、民主・自由主義政党の「市民プラットフォーム」(PO)を抑えて大統領と首相のポストを掌握してきたが、今回は苦戦を強いられている。

 そもそも、1989年の体制転換以降、東欧の民主化運動と自由化・体制転換を主導してきたポーランドが、近年になってなぜ保守・ポピュリスト政党に政権を委ねているのか。そして、現在のポーランドは、何を争点に選挙戦を闘っているのか。後編では、対立の政治的、社会的背景を繙きながら、ポーランド人の苦悩を読み解く。

民主化過程における保守勢力の台頭

 ポーランドは、1980年代の「連帯」運動、1990年代の体制転換期を通じて、常に東欧民主化運動の先頭を走ってきた。一時は民主・自由主義政党の「市民プラットフォーム」が圧倒的優勢を維持し、2007〜2014年の間首相を務めたドナルド・トゥスクは、国民の熱い支持を集めていた。トゥスクは、体制転換当時の自由主義政党結党に参加しており、中道政党・「市民プラットフォーム」が立ち上げられた時(2001年)、発起人の一人になっている。2003~2014年には、同党の党首も務めている。ポーランド首相(2007~2014年)、欧州理事会議長(2014~2019年)、欧州人民党(EPP)議長(2019–2022)を経て、2021年からは再び「市民プラットフォーム」の党首に返り咲いた。

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