新たな国防相にはクリミア・タタール人のルステム・ウメロフが就任した[議会で演説するウメロフ=2023年9月6日、ウクライナ・キーウ](C)AFP=時事

 ロシアに対するウクライナの反転攻勢が続く中、侵略の「原点の地」が再び注目されるようになっている。それは、ウクライナ南部クリミア半島だ。2014年3月にロシアが一方的に自国領へ併合した行為は、実態としては武力を用いた侵略だった。このとき国際社会は微温的な態度にとどまり、8年後の全面侵攻につながった。

 ロシア軍の要塞と化したクリミアに対し、その奪還を目指すウクライナは今年6月から攻撃を次々と繰り出している。また、同9月上旬には半島の先住民族であるクリミア・タタール人がウクライナ国防相の要職に就いた。

中央アジアに強制移住させられたクリミア・タタール人

 そもそもクリミア半島とはどのような土地か。黒海に突き出たひし形をしており、その面積は日本の四国の1.4倍ほどだ。地理的条件からさまざまな民族が住み着き、古代にはギリシャの植民都市もあった。中世に入ると、モンゴル帝国の流れをくむイスラム王朝、クリミア・ハン国が成立。やがて、同じチュルク系の強国オスマン帝国の保護下に入った。

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