(C)時事[写真はイメージです]

【前回まで】制服組の切迫感を肌で感じつつ、要望書を上げるという井端の提案に、磯部は同意できなかった。財務省では、周防たちが臨戦態勢を想定して、補正予算の算定を始める。

 

Episode4 カナリア

 

13

 目が覚めた時、どこにいるのか、分からなかった。

 眼鏡を掛け周囲を見渡して、ようやく草刈は自宅の寝室だと理解した。

 いつ、戻ってきたのだろう。

 防衛省のプレスルームで、朝まで粘るはずだったのに……。

 そこで、ようやく頭が現実に戻った。

 時計を見ると、午前10時前だった。

 保育園の送りの時刻を、とっくに過ぎている。

 慌てて起き上がると、貧血を起こして、座り込んでしまった。

 今度は、ゆっくりと立ち上がって部屋を出たところで、母と顔を合わせた。

「あら、もう起きちゃったの?」

「希の保育園!」

「和彦[かずひこ]さんが、行ってくれましたよ。だから、もう少し休んでなさいよ」

「私、何時に帰ってきたの?」

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。