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【前回まで】潜水艦事故の2日前、ある計画を胸に渡中を決意する都倉は、繁森外務大臣の制止も突破した。日台関係の専門家である野添は、外務省を辞めて同行すると都倉に告げる。

 

Episode5 四面楚歌

 

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 事故当日――。

 中国への入国も、その後ホテルへの移動も、まったく滞りなく進み、都倉は「偲ぶ会」会場の北京飯店に入った。

 同行者全員が、ピリピリしているのをずっと感じていたが、会場に入ってからは、懐かしい旧友との再会で気持がほぐれた。

 広い会場が埋め尽くされるほどの出席者が、三々五々にかつての仲間との再会を楽しんでいた。

 都倉も、今や政府幹部や政治局員になった同窓生と旧交を温めつつ、目当ての人物の到着を待った。

 会が始まってから1時間が経過しようとした頃だ。今回の秘密会談を仲介した日中友愛協会事務局長の王晴美が、近づいてきた。

「5分後に、携帯電話が鳴ります。日本から総務会長に急用という態です。そこから先は、先方が案内するそうです」

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