チンパンジーの集団が、遠くにいる他のチンパンジーの音を聞く様子[アフリカ西部コートジボワールの森で、タイチンパンジープロジェクトの研究の一環として撮影(以下写真も同じ)](C)Roman M. Wittig/Tai Chimpanzee Project/REUTERS

[ロイター発]国境の危険な地域で、約30人の部隊がパトロールのために岩だらけの丘を登り、様子を偵察する。聞こえてくる音から敵と近すぎることを悟った部隊は、撤退することに。勝ち目のない戦いに挑むべき理由はない。

 こうした状況は、人類の戦争の歴史の中で何回も繰り返されたはず。だがこれは、人間ではなく、チンパンジーの話。西アフリカ最大の雨林保護地域であるタイ国立公園(コートジボワール)に暮らすチンパンジーの間で観察された行動だ。

 11月3日に学術誌「PLOS Biology」に掲載された論文は、研究チームがチンパンジーの群れ同士が抗争状態のときに、高台を戦略的に使う様子について発表した。

 研究はタイ国立公園で、隣り合わせに暮らす野生の西洋チンパンジーの2つ集団を3年間、毎日観察し行われたもの。チンパンジーたちは高台から敵を偵察した際に得られた情報をもとに敵地に侵入するかを判断し、直接対立するリスクが低いと敵地へ侵入する傾向があった。人間は古くから軍事戦略で高台に登り敵の様子を偵察してきたが、研究チームによると、チンパンジーが同様に高台を活用していることが記録されたのは今回が初めてになる。

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