最近では総裁より踏み込んだ発言をすることも[辞令交付後、記念撮影する日銀の(左から)氷見野良三副総裁、内田真一副総裁、植田和男総裁=2023年4月10日、首相官邸](C)時事

 資源エネルギー価格の高騰から始まった物価高が2年近く続くなかで、日本銀行が異次元緩和からの出口戦略にもたついている。金融政策の課題を熟知する学者出身の植田和男氏(72)が総裁に就任し、ようやく出口へと向かう条件が整ったかと思われていたのだが、その植田日銀が政策の微修正はしつつも、なぜかいまだに異次元緩和を続けているのだ。

プロ感覚でも慎重すぎる植田日銀

 今春、黒田東彦総裁(79)が退任し、植田総裁が跡を引き継いだ。10年にわたって修正に修正を重ねた異形の金融政策。保有国債580兆円という「負の遺産」とともに、それがそっくりそのまま植田日銀に引き継がれたわけだ。

 日銀が巨額の国債を買い取り、大量のマネーを市場に供給することで2年以内に2%インフレ目標を達成。物価上昇と賃金上昇の好循環経済をつくる――。安倍政権と黒田日銀が描いたそんなシナリオはとうに破綻した。巨額のコストをかけておこなわれたこの社会実験は、完全に失敗に終わったのである。ところが黒田日銀はその後も異次元緩和を手じまいすることなく、ずるずると10年にわたって緩和マネーを垂れ流してきた。植田日銀に課された使命は、その異次元緩和を一刻も早く終結させ、日銀の金融政策を正常化させることだ。

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