ニュルンベルクにある連邦移民難民庁の正門(2023年11月22日、筆者撮影)

 ヨーロッパではここ数年、アフリカ、中東から流入する不法移民の数が急増し、社会不安を引き起こしている。それを背景に、各国で右派ポピュリズム政党の支持拡大が顕著だ。ドイツの難民認定審査の最前線にある難民認定・支援機関「連邦移民難民庁」(BAMF)本部を訪ね、申請者急増に苦慮している現状を見た。

「審査」と「社会統合」を所管

 移民難民庁は、首都ベルリンから特急列車で約3時間、ドイツ南部バイエルン州第2の都市ニュルンベルクに本部が設けられている。

 ニュルンベルクと聞けば、ドイツのことを勉強した人ならば、「国民社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)」の党大会が開かれた場所として認識しているだろう。1935年には当地で臨時国会が開かれ、ユダヤ人から市民権を剥奪する「ニュルンベルク法」が採択された。第2次世界大戦後、連合軍がナチの戦争犯罪を裁く「ニュルンベルク国際軍事裁判」を開いた場所であることは言うまでもない。

 同市は神聖ローマ皇帝直属の自由帝国都市であり、ドイツナショナリズムの象徴としての歴史を持っていたことから、ナチ党が党大会開催の場所としたのだが、戦後は非道なナチ支配を象徴する町となってしまった。また、西ドイツ諸都市の中で東西世界を分断する「鉄のカーテン」に近いこともあり、東欧諸国や東ドイツから多くの追放民、難民が流入した。戦後のニュルンベルクはこうした人々を積極的に救済する「人権都市」としてまちづくりをしてきた。連邦難民認定庁(移民難民庁の前身)が1996年に当地に移転した一つの理由だという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。