投票前夜に台北市の総統府前で開いた集会で演説する柯文哲氏=1月12日夜(台湾民衆党のフェイスブック公式アカウントより)

 与党・民主進歩党(民進党)の頼清徳氏(64)が三つ巴の選挙戦を制した台湾総統選の結果は概ね下馬評通りだったと言えるが、3位となった台湾民衆党の柯文哲氏が予想よりも存在感を示したことは注目に値する。早くも2028年の次期総統選を窺う柯氏の今後を占う。

 医師出身で台北市長を2期務めた後、総統選に初挑戦した柯氏は369万票を集め、民進党・国民党以外の第三勢力としては、2000年の総統選で466万票を獲得した宋楚瑜氏(無所属)以来、初めて25%を超える得票率を記録した。大勢判明後、柯氏が支持者に対し、「得票は予想には届かなかったが、負けてはいない」と発言したのは本音だろう。当然民衆党主席を引責辞任することもなかった。

キャスティングボートを握った民衆党

 全体の得票率で見ると、頼清徳氏が40.05%、侯友宜氏(66、中国国民党)が33.49%、柯文哲氏が26.46%。筆者は選挙戦終盤で野党支持票のうち、柯氏を支持する票の一部が侯氏に流れることもあり得ると考えていた。台湾の選挙では伝統的に支持候補の当選が望めない場合、最も当選させたくない候補を落選させるため、比較的主義主張が近い候補に投票を集中する「棄保」効果と呼ばれる現象が現れることがあったが、今回は柯氏の支持層は思ったほど揺るがなかった。

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