条約交渉を終え、暗殺も覚悟で帰国する小村寿太郎(左)を、首相の桂太郎(右)は駅のホームで出迎えた 写真出典:国立国会図書館「近代日本人の肖像」 (https://www.ndl.go.jp/portrait/)

 理想的な外交官、よき交渉家の資質とは何だろうか。イギリスの外交官、アーネスト・サトウが「政治的叡智の宝庫」と称賛したフランソア・ド・カリエールの『外交談判法』(岩波文庫)は、この問題を考えるうえでの古典ともいうべき書である。カリエールは17世紀から18世紀にかけてのルイ14世の時代、国王や外務大臣につかえたフランスの「交渉家」で、自らの豊富な経験に基づいて提言している。この中で特にカリエールが交渉家の備えるべき資質として挙げた点を列記してみよう。

(1)立派な交渉家にとって必要なことは、しゃべりたくてむずむずしても、その欲望に抵抗できるような自制心を持たなければならない。

(2)交渉家は勇気があるばかりではなく、確固不動の精神を持たなければならない。

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