ウクライナのNATO加盟問題を従来以上進めることには、特に米国とドイツが反対しているといわれる[安全保障に関する二国間協定調印にあたり、記者会見するゼレンスキー大統領(左)とショルツ首相(右)=2024年2月16日、ドイツ・ベルリン](C)AFP=時事

 ロシアによるウクライナ全面侵攻が始まってからの間で、本稿(上)でみたように、米欧諸国によるウクライナの能力評価とウクライナ支援の本気度の上昇、そしてウクライナによるNATO、EUへの接近という大きな変化がすでにおきた。しかしすべてが変わったわけではない。全体の構図としては変わらないものが多いことも見逃せない。

 以下では変わらないものを順に検討し、そのうえで、(上)で検討した変わったものを加味し、今後を見通すための要点を考えることにしよう。

変わらないもの(1)ウクライナとロシアの立場

 この戦争をめぐるロシアとウクライナの基本的な立場は変わっていない。ロシアが国際法に違反し、隣国に対するいわれのない一方的侵攻をおこない、それに対してウクライナが自衛権を行使し、自国防衛のための戦いを強いられているという構図だ。これがすべての前提であり、それゆえ、たとえ戦場レベルでの具体的行動において類似点があったとしても、「どっちもどっち」ではない。この点は何度でも繰り返す必要がある。

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