(C)AFP=時事[写真はイメージです]

【前回まで】留学時代の親友・劉唯は、20年以上を経て変わらず美しかった。中国の諜報機関幹部になっていた彼女は、CIAにも盗聴されないというスマートフォンを都倉に託す。

 

Episode6 一世一代

 

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 午後1時から市谷の防衛省で始まった大臣会見では、都倉に記者たちの質問が殺到した。

 後方の席にいた草刈は、質疑応答が始まった途端、プレスルームの室温が数度上がるほどの熱気を感じた。

「いったん保守党を除名された方が、いきなり復帰し、しかも防衛大臣に就任された理由を伺えますか」

 質疑応答の冒頭、広報課長が「行政に関する質問に限ってお願い致します」と念を押したのに、いきなり無視してきた。

 だが、中国での“事件”によって保守党内で強烈な非難に晒され、売国奴とののしられた前総務会長を、今なお動揺が残る防衛省のトップに据えるという人事は、驚天動地だった。それだけに、その理由を明らかにするのは、都倉新大臣の最初の「行政」だとでも言わんばかりだ。

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