ニッキー・ヘイリーはトランプに潰されなかった稀有な人物である[米テキサス州フォートワースの集会で演説するヘイリー氏(中央)とその支持者たち=2024年3月4日](C)EPA=時事

 日本では 「もしトラ」の状況が「ほぼトラ」になったとして、トランプ再選が確実のような見方も多くでているが、選挙は半年以上先であり、実際のところ、ジョー・バイデンが勝つのか、ドナルド・トランプが勝つのかは、神のみぞ知るという状況にある。

 しかし「ほぼトラ」と考える人が増えている理由は理解できる。トランプ氏が今回の共和党予備選において圧倒的な支持を得て、3月5日のスーパーチューズデーで指名獲得を確実にしたからだ。そして共和党の「トランプ化」の進行を強く印象づけることになった。

8年前より進展した共和党のトランプ化

 2016年にトランプ氏が大統領に当選したときの共和党の予備選は、状況がまったく違っていた。トランプ氏は共和党のアウトサイダーであり、当時共和党執行部はトランプ氏を泡沫候補と考えていたが、予備選で着実に得票を重ねていき、3月のスーパーチューズデーが終わった時点では、首位ではあったが決着がつかないままだった。5月に2位につけていたテッド・クルーズ上院議員が撤退を表明すると、ラインス・プリーバス共和党全国委員長は、当時の共和党の価値観を全く反映していない「トランプ候補」を、ツイッター(現X)で「事実上の指名獲得者」と呼ぶ苦渋の選択をした。プリーバス氏はこの功績も評価されトランプ政権の初代・大統領首席補佐官となり、トランプ氏と既存の共和党の価値観や政策との調整を図るが、トランプ主義を徹底しようとするスティーブ・バノン首席戦略官(当時)らトランプ側近と衝突して早々に辞任した。

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